【獣医師監修】犬猫の顔面神経麻痺と東洋医学治療|症状・原因・改善のポイントを解説|前橋市の桑原動物病院
犬猫の顔面神経麻痺とは?
犬や猫の顔面神経麻痺とは、顔の筋肉を動かす神経(顔面神経)がうまく働かなくなる病気です。
顔面神経は、まばたき・口元の動き・耳の動きなどをコントロールしているため、障害が起こると表情の左右差が目立つようになります。
具体的には、片側のまぶたが閉じにくい、口元が曲がる、耳が動きにくいなどの症状が見られます。
多くは片側性ですが、まれに両側に起こることもあります。
特に高齢の犬や、外耳炎を繰り返している子では発症リスクが高まります。
なぜ顔面神経麻痺が起こるのか
顔面神経麻痺の原因は大きく「末梢性」と「中枢性」に分けられます。
- 末梢性麻痺:外耳炎・中耳炎・外傷などで、神経そのものが炎症や圧迫を受けるタイプ
- 中枢性麻痺:脳炎や脳腫瘍、外傷などにより、脳内で神経の伝達が障害されるタイプ
また、検査をしても原因が特定できない「特発性顔面神経麻痺」もあります。
寒い日やシャンプー後など、冷えやストレスが引き金となることも少なくありません。
こんな症状は要注意(受診すべき目安)
顔面神経麻痺が疑われる主な症状には、次のようなものがあります。
- 片方のまぶたが閉じない
- 涙が多い・目が乾いている
- 食べ物を口からこぼす
- 顔の片側が下がっている
- 耳が動かない・顔が左右で違って見える
これらの症状が見られたら、早めに動物病院での診察を受けましょう。
放置すると、目の乾燥による角膜障害や、食べこぼしによる皮膚炎など二次的なトラブルにつながることがあります。
動物病院で行う一般的な治療
顔面神経麻痺の治療は、原因に応じて以下のように行います。
- 抗炎症薬・ビタミン剤:神経の炎症を抑え、回復を促す
- 耳の治療:外耳炎や中耳炎がある場合は、原因となる感染を治療
- 角膜保護:まぶたが閉じにくい場合、点眼薬やアイガードで乾燥を防ぐ
これらを組み合わせ、症状の進行を防ぎながら回復を待つことが重要です。
東洋医学から見る顔面神経麻痺と当院の治療
東洋医学では、顔面神経麻痺を「風(ふう)」「寒(かん)」「湿(しつ)」といった外からの影響や、体の中の気血の滞りによって起こると考えます。
これらの邪(じゃ)が体の表面から入り込み、顔の筋肉を動かす神経に影響すると、まばたきができない・口元が下がるなどの症状が現れる、という捉え方です。
東洋医学治療では、滞りを整え、神経の働きと血流を回復させることを目的に施術を行います。
頭や顔まわりのツボに加え、全身のバランスを整えるツボを組み合わせ、局所と全身の「めぐり」を同時に改善します。
特に当院では、温灸を併用して冷えを取り除き、筋肉のこわばりをやわらげる治療を行っています。
これにより表情筋の動きを取り戻し、まばたきや口元の動きが改善しやすくなります。
また、体質や症状に応じて漢方薬を併用し、神経や筋肉の回復を内側から支える治療も取り入れています。
顔面神経麻痺は「痛みを取る」だけでなく、体の流れを整えながら回復を促すことが重要です。
再発予防や体質改善にもつながる、穏やかな治療を行っています。
ご自宅でできるケア
ご家庭でも、次のようなサポートを行うことで回復を助けられます。
- 目の保護:乾燥を防ぐため、点眼薬や保湿剤を欠かさず使用する
- 顔の温め:温タオルで顔まわりをやさしく温め、血流を促す
- ストレスを避ける:静かで安心できる環境を保つ
- 食事の工夫:食べやすい形状にする(ドライ→ふやかす等)
顔面神経麻痺は回復まで時間がかかることもありますが、焦らずサポートを続けることが大切です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 顔面神経麻痺は治りますか?
多くのケースで、時間とともに回復が見られます。早期の治療開始が重要です。
Q2. 東洋医学治療はどれくらいの頻度で受ければよいですか?
発症初期は週1回の施術を2〜3週間続けるのが目安です。その後は回復の度合いに応じて間隔をあけます。
Q3. 痛みはありませんか?
刺さない鍼もあり、個々の状態に合わせて施術します。ほとんどの動物がリラックスして受けており、施術中に眠ってしまう子もいます。
まとめ:顔面神経麻痺は早期治療がカギ
顔面神経麻痺は、早期に対応するほど回復の可能性が高い病気です。
症状が軽いうちから治療を始めることで、後遺症を防ぎやすくなります。
桑原動物病院では、西洋医学と東洋医学治療を組み合わせ、体全体を整えながら神経の回復をサポートしています。
「顔の動きが気になる」「目が閉じにくい」と感じたら、どうぞお早めにご相談ください。






