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【獣医師が解説】脳梗塞や脳血管障害:犬のMRI検査でわかることとは?

前橋市・高崎市・伊勢崎市・藤岡市・安中市・渋川市のみなさん、こんにちは!
前橋市の桑原動物病院です。今回は犬猫の脳梗塞の原因や症状、診断、治療などについて獣医師が詳しく解説していきます。

1. 犬・猫の脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)とMRI検査の重要性

 犬や猫の高齢化ならびにCT・MRIといった高度画像診断技術の進歩により、脳血管障害の発見が増えています。脳血管障害は主に「出血性疾患」と「虚血性疾患」の2つに分類されます。出血性疾患には、脳出血、くも膜下出血、硬膜下出血、硬膜外出血などがあり、虚血性疾患には、脳梗塞や一過性脳虚血発作などが含まれます。これらは総称して「脳卒中(stroke)」と呼ばれることもあります。
 犬・猫では、出血性よりも虚血性の脳血管障害の発生が多い傾向があります。MRIは脳内の血管や組織の状態を詳細に描出できるため、脳梗塞などの脳血管障害を早期に発見し、正確に診断するうえで必須の検査となります。

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2. 犬の脳血管障害とは?その症状と原因
 犬の脳血管障害は、脳の血管が詰まり血流が途絶えることで、脳細胞が酸素不足に陥り、障害が発生する状態を指します。人間と同様に、犬でも発症すると身体機能や神経機能に深刻な影響を与えることがあります。この疾患は中齢以降の犬に多くみられ、特にキャバリア・キングチャールズ・スパニエル、グレーハウンド、ミニチュアシュナウザーに多い傾向があります。

主な臨床徴候:
・急性または極めて急激(甚急性)に症状が出現し、非進行性
・突然のふらつきや旋回運動などの歩行障害(運動失調)
・片側の手足が動かない(片麻痺)
・首が傾く(捻転斜頚)、眼振、斜視
・頭部や体幹などが意図せずに震える(企図振戦)
・てんかん発作

 ある日突然、晴天の霹靂のように上記の症状が出現することが多いため、ご家族の方が気づきやすいですが、初期症状が軽い場合には見逃されることもります。

原因:
 犬の脳血管障害の原因としては、虚血性疾患では、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症などの脂質代謝異常や慢性腎臓病、副腎皮質機能亢進症などによる高血圧に関連して血栓症となることがあります。その他にも、心臓疾患、腫瘍性疾患、犬糸状虫などの寄生虫疾患、播種性血管内凝固症候群(DIC)などによっても血栓や塞栓症が生じる可能性が考えられております。

3. 脳血管障害の診断にMRIが必要な理由

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虚血性脳血管障害
 CT画像では虚血性脳血管障害の急性期では異常を検出しにくいので、MRI検査が推奨されます。
 MRI検査では、脳の灰白質や深部白質が障害され、T2強調画像・FLAIR画像にて高信号、T1強調画像にて低〜等信号を呈する境界明瞭な病変として認められます(図1)。病変部の造影剤によるコントラスト増強は発症の経過時間により様々です。
 超急性期の場合には、拡散強調画像(DWI)を撮像することで、脳卒中の診断率を高めることが可能となります。

出血性脳血管障害
 急性出血の診断にはCTとMRI検査ともに極めて高感度で検出可能です。CT画像ではヘモグロビンのX線吸収性の違いにより他の脳実質と比較して高吸収病変(白い病変)として認められます。
 MRI検査では、出血の経過時間によって、病変部の信号強度が経時的に変化していきます。また、T2*(T2スター)強調画像は、出血病変の検出感度が高く、非常に有用な撮像方法となります。

4. 犬のMRI検査の流れと注意点

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検査前の準備
・食事制限:12時間前からの絶食と3時間前から絶水をお願いします。
・麻酔薬の使用:MRI検査には全身麻酔が必要となるので、麻酔薬を投与します。
検査中の手順
・MRI検査はだいたい1時間ほどかかります。犬をMRI検査機器内に入れて保定し、脳の詳細な画像を取得します。
・造影剤の使用:必要に応じて造影剤を用いて病変部位の検出を行います。
検査後の注意点
・検査後は麻酔薬の影響が残ることもありますが、多くは数時間で回復します。

5. 犬の脳梗塞MRI検査にかかる費用の目安


・MRI検査の費用は、一般的に10〜15万円前後です。
・検査の内容や病院によって費用が異なるため、事前に確認しておくことをお勧めします。
保険適用の可能性
ペット保険に加入している場合、MRI検査が補償対象となることもあります。脳疾患の診断や治療にかかる費用を軽減できることもあるため、保険内容を事前に確認しておきましょう。

6. MRI検査による診断結果と治療方針の決定
 ・基礎疾患の同定:基礎疾患の治療や併発疾患を確認してそれぞれの治療をご提案していきます。
・脳浮腫への対応:脳圧降下剤の静脈点滴あるいは経口投与によって管理します。
・てんかん発作のコントロール:てんかん発作が認められる場合には、抗てんかん薬を処方します。
・薬物療法:血液をサラサラにする抗凝固薬や血圧を管理する薬を処方されることが多いです。
・理学療法・鍼灸治療:麻痺などの神経症状がある場合,リハビリや鍼灸治療によって機能回復を促します。
・定期健診:再発防止のため、定期的な健康診断や血液検査が推奨されます。

7. 桑原動物病院のMRI検査の特徴とサポート体制

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①最新のMRI機器と高精度な診断
 当院では最新の人間用のMRI機器を使用し、高精度な画像診断を行っております。経験豊富な獣医師が脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)の早期発見・正確な診断を目指し、最善のサポートを提供しています。

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②専門的なサポート体制
 当院では、脳梗塞、脳出血などの基礎疾患の治療、薬物治療、リハビリや鍼灸治療をご提案していきながらトータルなサポート体制を整えております。ご家族の方が安心して治療に取り組めるよう、丁寧な説明と親身な対応を心がけております。

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図1
中大脳動脈支配領域の脳梗塞