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【獣医師が解説】犬の脳炎とMRI検査の重要性|前橋市の桑原動物病院

【獣医師が解説】犬の脳炎とMRI検査の重要性|前橋市の桑原動物病院

前橋市・高崎市・伊勢崎市・藤岡市・安中市・渋川市のみなさん、こんにちは。
前橋市の桑原動物病院です。
今回は「犬の脳炎」について、概要や症状、原因、かかりやすい犬種、そしてMRI検査の重要性や発見のポイントを詳しく解説いたします。

桑原動物病院MRIスキャンセンター


犬の脳炎とMRI検査の重要性

犬の脳炎は命に関わることもある重大な病気です。
犬の脳炎の診断において、MRI(磁気共鳴画像法)検査は極めて重要な役割を果たします。
MRI検査では、炎症や浮腫などの構造的な異常病変を詳細に描出することができます。
脳炎においては、早期診断と早期治療が鍵となり、進行の早い脳炎を早期に適切な治療を行うことで予後が大きく改善します。


犬の脳炎とは?その種類と症状

「脳炎」とは、脳に炎症が生じる疾患の総称です。最も代表的なものは、髄膜脳炎であり、感染性と非感染性の2つに大別されます。

・感染性脳炎:ウイルス性(ジステンパー、狂犬病など)、細菌性(脳膿瘍)、真菌性(クリプトコッカス)、原虫性(トキソプラズマなど)によるものであり,猫では猫伝染性腹膜炎あるいはボルナ病などがあります。

・非感染性髄膜脳炎(免疫介在性/特発性):起源不明の髄膜脳脊髄炎(Meningoencephalomyelitis of unknown origin: MUO)とも呼ばれ、多くの犬でこちらのタイプがみられます。また、発症年齢は若齢から中齢で多く見られますが、1歳未満あるいは7歳以上でも発症することがあります。さらに、MUOは、以下の髄膜脳炎を含んだ総称となります。
・壊死性髄膜脳炎(NME):以前はパグでの発症が多かったため,パグ脳炎と呼ばれておりましたが、マルチーズ,ポメラニアン,シーズー,パピヨン,チワワなどの小型犬での発生も多いです。

・壊死性白質脳炎(NLE):以前はヨーキー脳炎と呼ばれておりましたが、フレンチ・ブルドッグ、チワワやマルチーズでの発生が多くみられます。

・肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME):眼型、巣状型、播種型の3つのタイプがあり、フレンチ・ブルドッグ、トイプードル,ミニチュアダックスフンド、チワワなどで発生が多いです。

脳炎の臨床徴候
脳炎の徴候は病変の部位や進行度によって異なりますが、急性から慢性進行性の経過を辿り、てんかん発作、旋回運動、片側の麻痺、ふらつき(運動失調)、眼振などの前庭徴候、視覚欠損、頚部痛などの様々な神経徴候が見られます。


MRI検査が必要な理由

MRI検査の具体的な役割として脳炎では脳の特定部位に浮腫や炎症性病変が生じるため、MRIはこれらの異常を明瞭に描出でき、病変の部位・広がり・性質を評価するのに最適です。
神経徴候は脳炎以外にも、脳腫瘍、脳梗塞、水頭症、外傷などでも見られ、MRIによりこれらの疾患を明確に区別することが可能となります。
また治療後に再度MRIを撮影することで、病変が改善しているかどうかを確認できます。


犬のMRI検査の流れと注意点

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検査前の準備

  • 食事制限:検査の12時間前から絶食
  • 絶水:検査の3時間前から
  • 麻酔:安全性確保のため事前検査を実施し、全身麻酔下で行います

検査中

  • 検査時間:約1時間(症例により前後)
  • 必要に応じて造影剤を使用し、病変部位を明瞭化

検査後の注意

  • 麻酔から覚めた後は安静に過ごす
  • 当日は激しい運動を控える
  • 嘔吐や元気消失が続く場合は病院へご連絡ください

犬の脳炎MRI検査にかかる費用の目安

  • MRI検査費用:おおよそ10〜15万円前後(内容・施設により異なります)
  • ペット保険:加入内容により補償対象となる場合があります

MRI結果に基づく治療方針

犬のMRI検査で脳炎が疑われた場合、その画像診断結果をもとに、具体的な治療方針が決定されます。
MRIによって病変の位置・広がり・性質・重症度が明確になることで、どのような治療を行うべきか、どの程度の緊急性があるかが判断されます。
 治療方針としては、ステロイド(プレドニゾロン)による抗炎症や免疫反応の抑制、脳浮腫の軽減などを目的に治療を行います。
ステロイド単独でコントロールが難しい場合には、シクロスポリン、シトシンアラビノシド(シタラビン)、ミコフェノール酸モフェチルなどの免疫抑制剤との併用を行います。また、てんかん発作が認められる場合は、抗てんかん薬を併用することがあります。

一方、感染性脳炎が強く疑われる場合は、抗生物質、抗真菌薬、抗原虫薬などを使用します。感染性脳炎では、ステロイド治療を行うと感染が助長され症状が悪化することがありますので、注意が必要です。
MUOでは、適切な免疫抑制療法により症状の進行を抑えることができますが、プレドニゾロンの内服を休薬することが難しいこともあります。


桑原動物病院のMRI検査とサポート体制

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最新のMRI機器と高精度な診断

当院では人医療レベルの最新型MRI装置を導入し、微細な脳病変も高精度に評価可能です。
神経膠腫(グリオーマ)や髄膜腫などの早期発見・正確診断にも力を入れています。

専門的なサポート体制

神経疾患に精通した獣医師がMRI画像と臨床徴候を総合評価し、治療方針を立案します。
また、大学病院・放射線治療施設と連携し、外科・放射線・薬物療法を組み合わせた集学的治療を提供しています。
ご家族に寄り添い、丁寧な説明と親身な対応を大切にしています。


症例紹介

症例1:フレンチ・ブルドッグ(5歳・避妊済み雌)

image.png

FLAIR画像で左頭頂葉白質領域に高信号病変を認めました。
診断:起源不明の髄膜脳脊髄炎(MUO)

症例2:フレンチ・ブルドッグ(3歳・雌)

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T2WIにて右視床領域に不均一な高信号病変を認めました。
診断:起源不明の髄膜脳脊髄炎(MUO)


まとめ

犬の脳炎は早期発見・早期治療が非常に重要です。
MRI検査により正確な診断を行うことで、最適な治療を選択し、わんちゃんの回復を目指します。
神経症状(ふらつき・発作・旋回など)が見られた場合は、桑原動物病院までお気軽にご相談ください。