前橋市の桑原動物病院のブログ

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犬の気管虚脱の症状と治療、予防について解説

前橋市・高崎市・伊勢崎市・藤岡市・安中市・渋川市のみなさん、こんにちは!
前橋市の桑原動物病院です。今回は犬の気管虚脱の症状や治療、予防などについて獣医師が詳しく解説していきます。

○病態・症状

気管虚脱とは、呼吸をする時の空気の通り道である“気管”が潰れてしまい呼吸がしにくくなってしまう病気です。正常の気管はゴムホース状をしていて潰れることはありません。気管虚脱の原因は詳しくはわかっていませんが、遺伝子要因、先天性要因、栄養的要因、肥満などが指摘されています。主に中年齢(6歳以上)の小型犬(ポメラニアン、狆、マルチーズ、トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、チワワなど)に多いと言われていますが、全ての犬種で起こりうる病気です。主な症状は呼吸が荒い、「ガチョウの鳴き声」のようなガーガーという咳をする、水を飲むときにむせる、運動をするとすぐに疲れてしまったり運動をしたがらない、チアノーゼ(舌や唇が青くなる)が見られる、失神してしまうなどです。気管虚脱は虚脱部位によって頸部気管虚脱、胸部気管虚脱に分類されます。初期は頸部の気管虚脱が多いですが、病態が進むに従い胸部へと広がっていきます。

○診断

 気管虚脱の診断は発咳反射(頸部の気管を指で圧迫することで咳をするかどうか)の有無やレントゲン検査によって行います。レントゲン検査は息を吸った時と吐いた時の両方で撮影を行います。頸部気管虚脱の場合は息を吸った時に頸部の気管が狭まり、胸部気管虚脱の場合は息を吐いた時に胸部の気管が狭まるので、レントゲン検査によってどの部位の気管が虚脱しているかどうかを確認することができます。

○治療

 気管虚脱の治療には内科療法と外科療法があります。内科療法の主な目的は咳を抑えることです。そのためには咳を止めるお薬(鎮咳薬)や炎症を抑えるお薬(抗炎症薬)を飲む必要があります。また興奮によって咳が悪化してしまうことがあるので興奮を抑えるお薬(鎮静剤)を処方する場合もあります。その他に、肥満傾向の子に対しては体重減少や食事管理によるダイエット、首輪を使っている子に対しては胴輪(ハーネス)に変更してもらうことで症状の軽減が期待できます。

内科療法に効果が見られない場合や反応が悪い場合に外科療法を行うことがあります。外科療法にはプロテーゼ法と呼ばれる気管の外側にリングをつけて気管を補強する方法と気管内にステントを装着して気管を補強する方法があります。しかしプロテーゼ法に関しては胸部の気管虚脱は不適応となります。

○予防

 気管虚脱の予防に大事なことは、気管にかかる負担を軽くすることです。具体的には首輪ではなくハーネスを使う、太らせないようにすることが有効とされています。